原作を読んでから映画を観ると、必ず感じる「あの場面はどう描かれているのだろう」という期待と不安。吉田修一の小説『国宝』も例外ではありません。壮大な人間模様を描いた800ページの物語を、映画『国宝』はどのようにまとめ上げたのか。削られたもの、強調されたもの、そして映像だからこそ描けたもの――この記事では、原作との違いを切り口に映画の魅力をひも解いていきます。
比較表:原作と映画の違い
項目 | 原作小説『国宝』 | 映画『国宝』 |
---|---|---|
ページ数/時間 | 上下巻 約800ページ | 約175分(2025年6月公開) |
主要点 | 喜久雄の人生全体/多彩な人物描写 | 喜久雄と俊介の成長物語/絞り込まれた構成 |
登場人物 | 徳次、春江ほか豊富なサブキャラクター | 登場縮小、表現で補う(例:演技・仕草) |
表現方法 | 言葉の多層性と心理描写 | 映像美と演出により情念と狂気を具現化 |
魅力 | 清濁あわせ飲む人生の濃密さ | 観る者の心を焼き尽くすような狂気と美の結晶 |
原作では主要なキャラクターである徳地が映画では最初の部分しか出てきません。新年会で喜久雄と歌舞伎を演じたシーン、その後父親の敵を討つシーン。原作では一緒に大阪に行き、付き人の様に友人のように振る舞う徳地。徳地は喜久雄を坊っちゃんと呼び、喜久雄は徳地と徳ちゃんと呼びます。二人は仲の良い友人の様ですが、徳地は二つ下の喜久雄をいつも立てています。
人間国宝になったときインタビューを受けた際、写真撮影をしたのが生き別れの綾乃でしたが、原作では二人の交流は続いており、後に当時大関だった力士と結婚します。しかし喜久雄と綾乃はどこかギクシャクとした関係で、綾乃は喜久雄の事を家族を顧みず、芸の世界に溺れた自分勝手な人と思っている様です。
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